武士でありながら庶民の娯楽に才能を発揮した朋誠堂喜三二
蔦重をめぐる人物とキーワード⑱
5月11日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18回「歌麿よ、見徳(みるがとく)は一炊夢」では、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が生き別れていた唐丸(からまる/染谷将太)とついに再会を果たす。数年ぶりに会った唐丸は捨吉と名を変え、まるで死を急ぐかのような退廃的な暮らしをしていた。
■蔦重と唐丸の人生が再び交錯する

栗原信充画『肖像集』に手柄岡持として描かれた朋誠堂喜三二(国立国会図書館蔵)。喜三二の文芸活動において、『当世風俗通』(1773年)や『見徳一炊夢』(1781年)など、黄表紙のほとんどが蔦重の手で刊行されたもの。蔦重にとって喜三二は、耕書堂を大手版元に押し上げてくれた最大の協力者のひとりだった。
蔦重は「北川豊章」(きたがわとよあき)名義の絵に、かつて自分のもとにいたものの、現在は行方不明となっている唐丸の面影を見出した。しかし、実際に豊章(加藤虎ノ介)を訪ねてみると、似ても似つかぬ別人であり、蔦重はひどく落胆した。
それでもなお豊章の影に唐丸の存在を感じる蔦重は、捨吉(染谷将太)という青年と出会う。頑なに蔦重との面識を否定する捨吉だったが、蔦重は会った瞬間に、彼が唐丸であることを確信していた。足繁く通う蔦重に根負けし、ついに捨吉はこれまでの経緯を話し始めた。
その壮絶な半生に言葉を失う蔦重だったが、捨て鉢になり自暴自棄な日々を送る捨吉に対し、「俺はお前が生きていてよかったとしか思えない」と声をかけ、吉原へ誘った。子どもの頃にも蔦重に命を救われた経験を持つ捨吉は、再び蔦重と行動を共にすることを決意する。そして蔦重から「歌麿(うたまろ)」という新しい名を与えられ、絵師として再起を図ることとなった。
一方、執筆がなかなか思うように進んでいなかった朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ/尾美としのり)は、稀に見る傑作を書き上げ、蔦重を歓喜させた。蔦重の本屋・耕書堂の経営が順調に進むなか、江戸の老舗版元である鱗形屋(うろこがたや)が、店を閉じるという情報が飛び込んできたのだった。